昭和史(半藤 一利)

  • 昭和史の20年がどういう教訓を私たちに示してくれたか・・・
  • 第一に国民的熱狂をつくってはいけない。その国民的熱狂に流されてしまってはいけない。ひとことで言えば、時の勢いに駆り立てられてはいけないということです。熱狂というのは理性的なものではなく、感情的な産物ですが、昭和史全体をみてきますと、なんと日本人は熱狂したことか。マスコミに煽られ、いったん燃え上がってしまうと熱狂そのものが権威をもちはじめ、不動のもののように人びとを引っ張ってゆき、流してきました。・・・理性的に考えれば反対でも、国内情勢が許さないという妙な考え方に流されたのです。
  • 二番目は、最大の危機において日本人は抽象的な観念論を非常に好み、具体的な理性的な方法論をまったく検討しようとしないということです。自分にとって望ましい目標をまず設定し、実に上手な作文で壮大な空中楼閣を描くのが得意なんですね。物事は自分の希望するように動くと考えるのです。
  • 三番目に、日本型のタコツボ社会における小集団主義の弊害があるかと思います。
  • 国際的常識を、日本人はまったく理解していなかったこと。簡単に言えば、国際社会のなかの日本の位置づけを客観的に把握していなかった、これまた常に主観的思考による独善に陥っていたのです。
  • 何かことが起こった時に、対症療法的な、すぐに成果を求める短兵急な発想です。その場その場のごまかし的な方策で処理する。時間的空間的な広い意味での大局観がまったくない、複眼的な考え方がほとんど不在であったというのが、昭和史を通しての日本人のありかたでした。
  • まずくいった時の底知れぬ無責任です。