女帝 小池百合子(石井妙子)

  • 「『私からのプレゼント。早川さんがずっと持っていてね。絶対に人にあげたりしないでね』この時の小池の眼差し、言葉、声を、早川さんはその後の人生において何度となく思い出すことになる。」
  • 「『あのね。私、日本に帰ったら本を書くつもり。でも、そこに早川さんのことは書かない。ごめんね。だって、バレちゃうからね。』早川さんが黙っていると、小池は身体を寄せて、下から早川さんの眼を覗き込んできた。『いい?』早川さんは頷くよりなかった。翌日、小池は日本に向けて旅立っていった。」

 

  • 「『女で顔にアザがあって、親はあんなで。普通の就職や結婚は出来ないと、小さな頃から思ってたんだろう。あいつは、はったりで、それでもひとりで生き抜いてきたんだ』」「『あれは虚言癖というより、自己防衛だよ。あいつが手にしたのはイカロスの翼だ。こんなに飛べるとは、あいつだって思っていなかったろう。太陽に向かえば翼は溶けて墜落する。その日まで、あいつは飛び続ける気なんだ。』」

 

  • 「彼女は生涯において一度だけ、高い崖から飛び降りている。カイロ大学を卒業したと語った、その時である。」
  • 「彼女に会う機会があったなら、私は何を聞くだろう。崖から飛び降りたことを後悔しているか、それに見合うだけの人生は手に入れられたか、自分の人生を歩んでいるという実感はあるのか、あなたは何者になったのか。そして、太陽はあなたに眩しすぎなかったか、と聞くだろう。」