新しい世界 世界の賢人16人が語る未来(クーリエ・ジャポン編)

  • 民主主義は、市民の健康の保護という名の下に、簡単に独裁に変わります。この脅威は取るに足らないものではありません。
  • 感染症への薬は孤立主義でも分離主義でもなく、情報と協力です。ウイルスに対して人類が非常に有利な点は、効率的に協力ができることです。
  • しっかりとした公共衛生システムと有能な科学機関、正しく情報を得た市民とグローバルな連帯です。(ユヴァル・ノア・ハラリ)

 

  • 国の存亡を決めるのは出生数であり、特定の死因の死者数ではありません。ですから全体のバランスを見失ってはいけません。
  • 社会の活力の尺度となるのは、子供を作れる能力であり、高齢者の命を救える能力ではありません。もちろん、お年寄りを救うのは道徳上、絶対しなければならないことではあります。
  • そろそろ外出を再開すべきです。高齢者を救うために若者や現役世代の生活を犠牲にすることはできません。
  • この国が倒れすにすんだのは、トラック運転手、スーパーのレジ係、看護師、医師、教員のおかげであり、金融マンや法律を巧妙に操れる人のおかげではなかったのです。
  • 問題は物資の生産なのです、グローバル化というゲームに全面的に参加してしまったおめでたい国々があった一方、自国の産業を維持し、今も必要な物資(検査キット、マスク、人工呼吸器)を製造できる国々があるのです。(エマニュエル・トッド

 

  • 資本主義の世界に関して残念に思うのは、お金が人間関係においてこれほど大きな意味を持つようになってしまったことです。「幸福とは義理の兄弟より多く稼ぐことだ」と思えてしまう、そんな世界を作り出したのが、18世紀後半の西洋から発展していった資本主義であり、いまそれが世界全体に広まってしまったのは悲劇的です。
  • 人とともに生きること、信頼できる友人を持つこと、ほかの人との競争をできるだけ敵意のないものにすること。そんなことを意識しています。
  • めざすべきは「成長」でもなければ、「脱成長」でもありません。人間としての生活に最低限必要なものが何なのかを見据えるべきです。自国の若者に何を与えられるのか。どんな知的能力、身体的能力を持てるようにすべきか。若者が社会と調和を保ちながら生きられるようにするには何ができるのか。若者が興味を持てる直業に就けるようにするにはどうすればいいのか。(ダニエル・コーエン)

 

  • 実力で成功したのだから、市場社会が成功者に配分するものを受け取って当然だと考えるのです。それは置いてけぼりになった人たちは自業自得だとみなす見方にもなります。エリートから、そんな風に見下されれば、労働者階級の人びとの怒りと不満が大きくなるのは当然でした。正当でもありました。ただ、その怒りと不満を利用するために、人びとの最悪の感情に働きかけた政治家がいたのです。外国人嫌悪や超国家主義といった醜悪な感情に働きかけ、トランプの場合はそこに人種差別が追加されました。トランプなどの発言が醜いせいで、トランプなどを支持する人たちの訴えが政党だということになかなか気づけていません。
  • まずは文化からです。人に対する態度を変えるのです。政治ではなくてね。成功者は、ほんとうに自分の実力だけで成功したのかを問い直さなければなりません。
  • 社会民主主義の政党は本来、労働者と中流階級のための政党であり、彼らに指示されていました。従来は、富裕層と高学歴層が共和党に投票し、労働者が民主党に投票する傾向があったのです。
  • いまでは大卒が民主党に投票し、低学歴者がトランプに投票しています。教育が米国政治を分断する最大の要因になっています。
  • BLMの運動がきっかけで、アメリカの市民社会の回復が始まるかもしれません。ほんとうに久しぶりに出現した、有望な市民運動です。暗く、不確実な状況のなかに、差し込んだ一筋の希望の光です。(マイケル・サンデル

 

  • 「死」だけが、人間がこれまでずっと効率的かつ系統的にできている唯一のことですから。
  • 心に平安をもたらす唯一の方法が、最悪のシナリオを想定することです。そうすれば何が起ころうとも、大丈夫。なぜなら、最悪の事態を受け入れる準備がすでにできているのですから。
  • 私たちには「絞首刑の希望」が必要なのです。人間はみな、最終的には絞首台へと向かいます。
  • ざくろの実。3歳の子供の笑顔。海 ― 先の見えないコロナ時代において、こうしたものこそが心の拠り所にする価値のあるものなのです。(アラン・ド・ボトン)